Dai Takeuchi
山梨で桃とブドウを育てながら、家族とともに、季節のリズムに寄り添って暮らす竹内 大さん。
誰かの基準ではなく、自分が納得できるものを選び、自然と向き合いながら、自らの手で暮らしをつくる。
その日々の中にある、豊かさを訪ねました。
INTRODUCTION
埼玉で生まれ育ち、24歳で山梨へ。
現在は、妻と二人の子どもと犬と暮らしながら、桃とブドウを育てている。
果樹農業をするなら、日本有数の果物の産地である山梨で。
土地の気候や、長く受け継がれてきた知識。
その環境に支えられながら、思い描いていた果樹農家としての暮らしを始めて6年になる。
畑で働き、山で遊び、家族と暮らす。
仕事と遊び、暮らしを切り離すのではなく、すべてがひとつの生活の中にある。
「前の暮らしより、すごく豊かに暮らせています。」
自分が心地よいと思える生き方を、この土地で少しずつつくっている。
それは、自分にとって心地よい暮らしのリズムだった。
LIFESTYLE
4月から10月は、畑の繁忙期。
忙しい季節は日の出とともに畑へ出て、日が落ちるまで働く。
収穫の時期には、朝一番で桃やブドウを採り、その日のうちに梱包して送り出す。
夕方、家に帰れば犬の散歩へ。
家族みんなで食卓を囲み、子どもたちをお風呂に入れて、一日を終える。
そして、ブドウの収穫が終わる頃、暮らしのリズムもゆっくりと変わっていく。
山へ入り、キノコを採り、狩猟をする。
「木に合わせて仕事をしているので、休眠期には自分も一緒に休ませてもらっています。」
夏と冬では、まるで違う暮らし。
人間の都合ではなく、季節のリズムに自分を合わせていく。
それが、竹内さんの日常になっている。
「自分に嘘をついていないか。自分が納得できているか。」
VALUES
自分のことは、自分で選ぶ。
竹内さんが大切にしていることは、とてもシンプルだ。
「自分に嘘をついていないか。自分が納得できているか。」
会社員だった頃、仕事とプライベートは完全に切り離されていた。
生きるために働くのであれば、できるだけ自分が好きなことを仕事にしたい。
その方が、自分に嘘をつかずに生きられると思った。
ものを選ぶときも同じ。
流行っているからではなく、それを使っている自分の姿を想像できるか。
どこで、どう使うのか。そこから想像が広がり、ワクワクできるものを選ぶ。
そして、自分で手入れをしながら、できるだけ長く使う。
誰かの基準ではなく、自分が納得できるものを選ぶ。
その小さな選択の積み重ねが、今の暮らしにつながっている。
その言葉は、自分らしく生きることの本質を静かに語っていた。
PERSPECTIVE
自然は、思い通りにはならない。
農業を始めた頃は、「自分がこう育てたい」という気持ちが強かった。
けれど、桃やブドウは、人間のために実をつけているわけではない。
木には木の時間があり、木自身の営みがある。
大切なのは、自分の思い通りに育てることではなく、その木が今、何を必要としているのかを見ること。
乾いていないか。寒さで凍えていないか。
一本一本の状態を見ながら、その木が持っている力を引き出していく。
「その木が持っているポテンシャルを最大限に活かすことが、自分の仕事だと思っています。」
自然は、ときに、期待した以上のものを返してくれる。
予測できないからこそ、面白い。
自然を理解しようとすることは、仕事や遊びを楽しむことだけではなく、自分自身を理解することにもつながっていく。
自然と向き合う時間の中で、自分にとって大切なものも、少しずつ見えるようになった。
「これ以上に欲しいものはないと思うくらい、今は幸せです。」
WHAT MAKES US RICH
豊かさとは、すでにあるものに気づくこと。
家族がいて、好きなことを仕事にできて、好きなように遊べる環境がある。
「これ以上に欲しいものはないと思うくらい、今は幸せです。」
竹内さんにとって豊かさとは、自分が理想とする暮らしを、自分の手でつくっていくこと。
もちろん、すべてが思い通りになるわけではない。
うまくいかず悔しいこともあれば、「また来年」と思うこともある。
それでも、その一つひとつが経験となり、今の暮らしをつくっている。
そして、その暮らしの中にある豊かさに気づくためには、想像することも大切だという。
たとえば、旬の秋刀魚を食べる。
海があり、季節があり、漁師がいて、それが自分たちの食卓まで届く。
秋の風を感じながら、家族や仲間と「美味しいね」と食べる。
その背景にある自然や人の営みまで想像すると、何気ない時間が、とても贅沢なものに感じられる。
今がどんな季節なのか。何が旬なのか。目の前にあるものが、どこから来たのか。
何かを求め続けるのではなく、自分の手で暮らしをつくり、すでにそこにあるものの価値に気づくこと。
竹内さんにとっての豊かさは、そんな日々の中にある。